生霊を斬る
どんな伝承か
加賀金沢に享保のころ、十兵衛という青年がいた。江戸で奉公するうち夫婦約束をした情婦ができたが、金沢に戻って商売を始め繁盛するうち、女のことを忘れがちになった。すると毎夜、夢うつつに女が現れ早く迎えに来てくれと訴える。狐狸の仕業と思い込んだ十兵衛は、現れた女に抜き討ちで斬りつけると、悲鳴とともに姿は消えた。数日後、夢に女が現れ髪を一握り握らせる。目覚めると本当に女の髪を握っており、驚いて江戸へ行くと、女は斬りつけた夜に死んでいたと知れた。墓を掘り返すと、亡骸は背から胸まで斬られ、髪も剪り取られていた。十兵衛はその場で剃髪し、女の後生を弔ったという。
原典より
加賀の金澤に、享保年代に十兵衛と云ふ青年があって、江戸へ出て奉公稼ぎをして居る内、夫婦約束をした情婦が出来たが、何年經てか少しかねが溜ったので、單身故郷へ歸り商舗を開いたところ大に當り、半年ばかりでシッカリ繁昌するやうに…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))