明治末頃の話
どんな伝承か
明治末頃のことという。旧制金沢高等学校の生徒であった、ある寺の息子の青年が、冬の夜に父である和尚と向き合っていると、誰もいないはずの本堂で足音がし、鉦の音が三つ響いた。続いて庫裡との間の重い杉戸がひとりでに開き、廊下を歩く足音が近づいてくる。和尚は「今、人が死んだ」と言うと、そのまま念仏を唱え始めた。足音は廊下を庫裡へ向かい、水を使うような音がしたのち再び戻り、杉戸が閉まる音、本堂を巡る足音、鉦の音が三つして、すべてが終わった。この間、和尚は念仏を唱え続けていたという。まもなく、近隣で人が死んだとの知らせが寺に届いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。