紀伊の国坂で顔を撫でた女
どんな伝承か
城下町の道にはさまざまな妖怪が出た。よく知られるのがのっぺらぼうで、目も鼻も口もなく蒟蒻に似ているという。小泉八雲もこれに材を取っている。夜更け、東京の紀伊の国坂を通りかかった商人が、堀端にうずくまって泣く女を見つけた。身なりのよい娘なので身投げでもするのかと案じ、声をかけ続けると、女はやっと振り向いて片手で自分の顔を撫でまわす。目も鼻も口もない。逃げた先の屋台のそば屋に訴えると、そば屋は、お前が見たのはこんなものかと言って同じように顔を撫でた。その顔も同じで、提灯の灯は消えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・昭和中期(1977年頃))
ザシキワラシ(座敷童子)と福の神(怪談の世界)/遠野・東北の怪異伝承/家運の盛衰と怪音/妖怪と幽霊譚/山田野理夫の怪談採集