水だけで働く金魚のような女
どんな伝承か
大阪市北久宝寺町三丁目の鏡問屋桜井某方に数年前から女中として住み込んでいる松田きく(仮名・二十五歳)は、同家二十数人の大所帯の勝手を一人で切り回し、男も及ばぬ働きをしていた。ところが不思議なことに、雇われて以来、三度の食事はもちろん米一粒も食べず、ただ水とごく少量の野菜類を毎日摂るだけで働き通し、しかも一度も病床についたことがないというので大評判になった。北海道後志国の片田舎の生まれで、十歳の時に風邪から高熱に悩まされ、医師の勧めで水ばかり飲まされて以来、全快しても飯を食べず水を食糧としているという。大阪赤十字病院の博士らが体質を見せてほしいと再三交渉したが、病人ではないからと拒んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方編著・日本怪奇集成・昭和初期(推定昭和2-3年))
明治・大正・昭和の怪奇譚(日本怪奇集成)/生首と幽霊の怪/狐狸のいたずら/怪盗と世相の怪異/各時代の不思議な事件