どうやら此の話は明治の頃であり、百年余り前のことであ(2)
どんな伝承か
高知県土佐郡の話。明治のころ、百年余り前のこと。今の土佐町で大猪が獲れ、その肉を翌朝までに高知へ届ければ駄賃を二倍やると言われ、ある人が請け合った。道は山越しで、鏡村吉原という家が三軒ほどの山裾を通り、高知まで二十七、八キロを日暮れから夜通し歩く。七合目まで登ったとき、肉の匂いを嗅ぎつけた山犬が道の左右を付けてきた。やがて山犬は道をふさぐように尻を突き合わせ、真っ赤な目を輝かせる。男はどうぞ通してくださいと声をかけて通り抜け、峠でも同じ目に遭いながら、ようやく杉谷の人家にたどり着いた。一番鶏が鳴くのを聞いて安心し、また肉を担いで高知へ向かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。