幽霊井戸
どんな伝承か
長崎市に幽霊井戸と呼ばれる井戸があり、日照りの年でも水が涸れぬので有名だった。昔この角に一軒の飴屋があった。ある夜、戸をたたくので開けてみると白い着物をきた二十四、五歳の女で、飴を一文がた買い、一文銭を置いて上の光源寺の方へ坂道を登って行った。四晩五晩とおなじことが続くので飴屋があとをつけると、女はスーッと寺の中に入り、本堂の横の墓の中に消え、柳の下から赤ん坊の泣き声が聞こえた。翌朝和尚とその場へ行くと新墓の塔婆があった。女は彫刻師藤原清永が京都で知り合った宿の娘で、清永が郷里長崎に呼びかえされたあと訪ねて来て、疲れと悩みで死んだのだという。墓を掘りおこすと生まれたばかりの赤ん坊がおり、六道銭で飴を買って育てていたものらしい。清永は女を供養し、その姿を彫って寺へ納めた。飴屋の前に落ちていた朱色の女櫛の下を掘ると冷たい水が出た。これが幽霊井戸である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第13巻』所収の「文化叙事伝説」全35話(福岡・大分・佐賀・長崎=北九州)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。