宅島夫人の霊視・引越し前夜の戦争犠牲者の老婆
どんな伝承か
これも宅島夫人が岩川町の市営住宅にいたころのこと。いよいよ明日は引越しという前の晩、十二時を少し回ったころ、玄関から案内も乞わず、帯も締めない寝巻き姿の老婆が茶の間に入ってきて火鉢の前に座った。主人が障子をガラリと開けると、老婆は火鉢の横に座ったまま長崎の言葉で「あんたたちのごとうったちばきらわんでもよかですたい」と、しわがれた、それでいて力強い声で二回繰り返し、ぱっと消えた。この一帯は戦争犠牲者が無数に出た土地で、家の下にも多くの遺骨がそのままになっていた。私たちを嫌わずもっとこの家にいてほしい、という意味だったのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けは生きている —科学にとり残された霊の世界(平野威馬雄・昭和49年(1974年)8月20日初版・双葉社)
「お化けを守る会」世話人頭・平野威馬雄が、幽霊・心霊・物の怪・心霊科学を縦横に語る一書。第一章は読者から寄せられた現代の幽霊・たたり実話(八幡市の泣き声屋敷、秋田の生首屋敷、お盆の帰省霊、四谷怪談のたたり、双生児に取り憑く絞殺被害者の霊、大刈峠殺人事件の幽霊と霊能者・三好天泉による招霊で犯人像が捜査と符合した実録)を収める。