崎山稲荷の狐が貸した膳椀
どんな伝承か
新井の崎山稲荷大明神は数ある稲荷社のなかでも名高く、遠方からの参詣者も多かった。ここには椀貸しの言い伝えがある。昔の百姓は暮らしが貧しく道具も乏しかったから、法事や嫁取りのたびに膳や椀を親方の家から借りて間に合わせていた。ところが親方に頭を下げるよりも崎山さんに頼むほうが気安く、しかも入り用のものは何でも揃えてもらえるというので、大勢が借りに通ったという。やがて、欲を出して返さない者があったのか、割ってしまって黙っていた者があったのか、とにかく返さぬ者が出て、以後は貸してもらえなくなった。もっとも、その膳椀は崎山の狐が新井の「もんや」の蔵から持ち出して貸していたのだといわれている。
原典より
〈高木―「椀貸穴」 柳田―「椀貸穴」〉朝来町新井の崎山稲荷大明神は、数多い稲荷社の中でも有名で、遠くから参る人が多かった。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第8巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全133話(滋賀・京都・兵庫=近畿)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。