娘の顔をねぶる幽魂
どんな伝承か
広島の藩医・進藤寿伯の見聞録『耳の垢』(宝暦七年)には、磨屋町の番作兵衛という者が病死した際、貧しさゆえに弔いも取り置きも粗末であったため、毎夜その幽魂が現れて娘の顔をねぶったという記録が残されている。江戸封建社会の底辺で貧困から抜け出せぬまま窮死した父親の哀れな生涯が、この短い怪異譚の背後にうかがえる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・昭和)
早川純夫『日本の妖怪』。神話時代から江戸まで、日本の妖怪と妖異を歴史の流れに沿って描く。