十丈の榎に化けた老狐
どんな伝承か
奈良の京の南に三橋という所があり、そこに住む中大夫が馬を失って、従者一人を連れ胡簶を負って探しに出た。三橋から東の山の方へ二、三十町ほど分け入るうちに日が暮れ、朧月夜となった。すると、幹の太さが屋二間ばかり、長さ二十丈ほどもある榎の木が一町ほど先に立っている。従者に問うと男にも同じように見えるという。この国にこれほどの榎はなく、そこには小さい木があるだけだと聞いて、迷わし神に値ったと恐れて帰ろうとしたが、従者の勧めで二人同時に矢を射た。矢の当たる音がして木は俄に消えた。翌日行ってみると、毛もない老狐が榎の枝を一つくわえ、腹に矢を射立てられたまま死んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。