火を吹く鬼面の怪物
どんな伝承か
大和郡山藩の家老・柳澤洪園の茶園は、郡山から西へ十三町ほどの池城村にあった。園丁の彌二兵衛という六十歳ほどの農夫は、五月のある日、主家からの帰り道、木の島川を渡りかけたとき、西南の金剛山の麓の方角に一つの火が現れるのを見た。その火は速く飛来し、地上約二間の高さを七、八間まで近づき、羽音のような音を立てた。よく見ると鬼面そのままの姿で、牙が生え、黒く長い髪を地に引きずり、口から火焔を吐いていたという。彌二兵衛は化け火に遭ったときは俯せに伏せるものという古老の教えを思い出し、堤の下で俯せになると、火は頭上をかすめて北へ向きを変えて飛び去った。
原典より
大和郡山侯の家老柳澤洪園の茶園が、郡山から十三町ばかり西の池城村と云ふにあつて、園丁に彌二兵衛と云ふ六十才ばかりの農夫の律義ものを使って居たが、五月の或る日、彌二兵衛は主家へ来て夜更けて歸途に就き、六七町ばかり歩んで富の…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))