付喪神と煤払い
どんな伝承か
古い道具にも霊魂が宿るという考えは、付喪神の信仰といわれた。『好古小録』上巻には「陰陽雑記」を引いて、器物は百年を経て化して精霊を得、人をたぶらかすようになる、これを付喪神と号すとある。それゆえ世俗では毎年立春に先立って、人家の道具を払い出し路地に捨てることを「煤払い」といい、百年に一年足らぬ付喪神の災難に遭わないためだとする。これは中世以来の京都の都市民の生活のなかから生じた民俗信仰である。新しい道具が使われだすと古い道具が捨てられ、その捨てられた道具が人間に祟りをするという状況が、話の社会的背景としてあったとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。