信心深く仏様と呼ばれた市郎兵衛が
どんな伝承か
維新前のこと、山城の国伏見町に市郎兵衛という者がいた。深く仏教に帰依し、蚤や蚊さえ殺さぬほどの信者で、近所からは市郎兵衛殿とは呼ばれず仏様と名づけられていた。その市郎兵衛が、ある夜、隣家の門口の土中に埋もれている阿弥陀を掘り出してくれという夢のお告げを受けたという。隣家の主人は信じなかったが、同じ夢が七晩続いたので承知して掘ったところ、五尺までは何も出ず、さらに一尺余掘り下げると銅の仏像が出て大評判となった。のちに役人が両人の挙動を怪しんで吟味すると、前年に相談の上で仏像を埋め、夢に託して利を得ようとした奸計だと白状したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・明治(妖怪学))
『妖怪博士』井上円了による『迷信の諸相・宗教の真相』。迷信を道理に背くことを誤って信じる心理と定義し、妖怪学の立場から全国を巡遊して各地の迷信を実地に報告・批判する(迷信打破)。