種痘を拒んで罰金を科された出口なお
どんな伝承か
出口なおは、疱瘡を守るのは狐の霊の力だと説き、外国から牛の疱瘡の種を取り寄せて人を畜生にしてしまうようなやり方を神は認めていないと書き残した。その言葉どおり孫娘に種痘を受けさせず、そのために罰金を科されている。明治三十年代の信者たちも彼女の教えに忠実で、着るものは木綿に限り、髪を切らずに伸ばしたままの蓬髪とし、旅に出るときは蓑と笠に草鞋という古い身なりを通した。マッチも肉食も退けている。世の中はまるで闇だというなおの言葉を受けて、真昼間から火を入れた提灯を提げて歩く者さえいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・現代(近代史研究))
民俗学者・川村邦光が、近代日本が在来の習俗や憑きもの信仰をいかに〈迷信〉として再編し、狐憑きを脳病・神経病・憑依妄想へ病理化したかを、具体的事件・事例に即して論じた近代史。