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熊谷の病人を責めた狐落としの護摩

所在地埼玉県熊谷市
年代明治期
登場夫を病死で亡くした母
出典幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶

どんな伝承か

明治十年、郵便報知新聞に掲載された記事だという。埼玉県下熊谷駅のある家で、夫を病気で亡くした母親が、その後病の床につき、しばしば訳の分からないうわ言を口にするようになった。近所の者たちはこれを狐狸が取り憑いたものと考え、病人の枕元で護摩を焚いて室内を煙で満たし、数珠を揉み、幣帛を振り散らしながら、口々に真言を唱えて病人を打ち叩いた。病人が苦痛に堪えかね、すぐに立ち去ると言うと、一同は出ていくなら証拠を見せろと迫り、病人が困って油揚を持っていくと出鱈目に答えると、皆はそれを野辺へ連れて行き、さあ去れ、それ去れと責め立てたという。

原典より

埼玉県下熊谷駅○○母は、夫病死せしより細き煙りにその日を送りしに此ころ病床につき、…—— 幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年))

『幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』は、川村邦光が近代日本の民衆の心性をたどった論考で、あとがきは一九八九年十二月の日付である。明治の「血税一揆」の流言、トラホームと〈迷信〉、狐憑きと精神医学、「脳病」「神経病」、座敷牢と精神病者監護法、芦原将軍の誇大妄想と出口なおの神がかり、祖先教と靖国による霊魂の管理を、新聞記事や民話、医学書、調査報告から読み解く。はじめにの後に三部と終章を置き、あとがきで結ぶ。

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