籠の子を見守る美しい女
どんな伝承か
『遠野物語』が伝える一話である。佐々木喜善の知人岩城某の祖母は、若いころ遠野の侍勘下家へ乳母奉公に出ていた。ある夜更け、子に乳をやろうとエチコと呼ぶ育児用の籠のそばへ行くと、三十前後に見える美しい女が籠の中の子をじっと見つめていた。驚いて隣室の主人夫婦を起こしたが、そのときにはもう姿はなかったという。この家では二、三代前の主人が下婢に子を産ませたことがあり、本妻の嫉妬が激しくてその女はついに毒殺された。女には夫があったが、その男まで奥方に憎まれ、女房の代わりだと言われて無慈悲に使われたと伝わる。祖母が見たのは殺された下婢の霊だろうと噂された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路・幽霊・文学史・昭和)