おかよ婆さんが目撃する浄源坊の日常的な幽霊
どんな伝承か
冬の近いある日、浄源坊を最後まで看取った老婆おかよが著者を訪ね、中川氏も交えて寺のその後を語った。おかよは浄源坊の住んでいた庫裡の奥に新住職と暮らしていたが、近ごろは毎晩のように本堂の仏の前に浄源坊が生前の姿で立つという。昼に現れることもあるが多くは夕方で、曲ろくのそばや経机の脇にいて、少し痩せ、法衣の丈が短くなったように見える。たいていは黙っているが、長く観音経を読んでいたこともあり、如来に向かって合掌し、四国訛りで題目を唱える。姿は長くて十分ほどで、どこから来てどこへ去るのか跡形もないと語った。
原典より
おかよさんは生唾をのんで、ぼくの顔をじろじろみつめながら、「ほん毎晩のように御本堂の仏様の前へいつものなりしてぼかっとたたはりますのや」—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。