地下道を追ってくる金色のつむじ風
どんな伝承か
四年ほど前の新聞に、銀座と日比谷をつなぐ長い地下道に妖怪が出るという記事が載ったという。銀座寄りの階段の下から金色をした一筋のつむじ風が湧き、その風の中に化けものがいて追いかけてくる。逃げれば風はいっそう速さを増し、つんのめりそうになりながら走って、地下道を抜けた日比谷の改札口までたどり着くと、化けものはすっと消えたというのである。目撃した乗客の一人が刑事だったことから話に信憑性があるとされ、新聞に載ったのだと紹介者は書いている。東京の地下街は夜ともなれば妖怪の蠢く魔界になっても不思議はない、とも記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考5-東京妖異所の系譜(西郊民俗・不明)
本書は東京都内に点在する怪異現象を民俗学的に記録した論文である。渋谷の道祖神、台東区の狸の狛犬、泉岳寺駅の地下鉄異変など、7つの具体的な怪異事例を取り上げている。いずれも実在する地名・施設に関連した報告であり、江戸時代から近年まで長期にわたって伝承されている。本所七不思議との関連性も示唆され、東京における狐・狸などの妖怪による幻惑、呪いや祟りによる人的被害、廃墟や地下空間といった異界的空間での現象が主要テーマである。