狛犬になった身代わりの狸の石像
どんな伝承か
浅草にほど近い駒形二丁目の神社には、境内に狸の姿をした狛犬が据えられている。なぜこのようなものがあるのかと宮司に尋ねると、本所七不思議にかかわる話だという。江戸時代、音で人をたぶらかす狸を懲らしめのために何日も立たせておいたところ、狸は宮司まで欺いた。隙をうかがって石で自分の姿をこしらえ、それを身代わりに向こう向きに立たせて去ったのである。宮司は狸がじっと動かずにいるのを感心して眺めていたが、石だと気づいたときには十年が過ぎていた。以来その像を狛犬代わりにそのまま置いているのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考5-東京妖異所の系譜(西郊民俗・不明)
本書は東京都内に点在する怪異現象を民俗学的に記録した論文である。渋谷の道祖神、台東区の狸の狛犬、泉岳寺駅の地下鉄異変など、7つの具体的な怪異事例を取り上げている。いずれも実在する地名・施設に関連した報告であり、江戸時代から近年まで長期にわたって伝承されている。本所七不思議との関連性も示唆され、東京における狐・狸などの妖怪による幻惑、呪いや祟りによる人的被害、廃墟や地下空間といった異界的空間での現象が主要テーマである。