神田の実験会で炭火を咥えた男
どんな伝承か
数年前、神田あたりで開かれた心霊実験会での話として筆者が耳にしたものである。ある者が真っ赤に熾った火鉢の炭を火箸でつまみ出し、それを口に咥えてはあはあと息を吹いてみせたところ、講堂は大喝采になったという。筆者はこれを苦々しく見る。こんなつまらぬ芸に手を叩く人が多いから、いかさま師が絶えないのだと言う。裸の火を頬で咥えたのなら褒めてもよいが、歯で咥えただけで何を感心することがあるのか。歯の表面の琺瑯質は鉱物に近く熱を通さない。唇や舌を火傷する者はいても、歯を火傷した者はいないではないか、というのが筆者の説明である。
原典より
数年以前の事神田辺の心霊実験會で、一人がかんかんに熾つた火鉢の火の中から、真紅に焼けた炭火を一つ火箸で摘み出して之を口に咥へてハアハアと息を吹いて見せたので、講堂大喝采で有たことを聞きました。—— 心霊現象と死後の生活(梶天真・心霊研究・死後の生活・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象と死後の生活(梶天真・心霊研究・死後の生活・大正〜昭和(戦前))
戦前の心霊研究の主張と具体的交霊事例・懐疑(贋物の検証)を併せ収めた心霊論集。