天狗にさらわれた出家の屍
どんな伝承か
京都醍醐辺の話である。ある寺で数人の僧たちがつれづれに話をしていたところ、そのうちの一人がちょっとと言って座を立ち、そのまま戻らなかった。黙って己の庵へ帰ったのかと小僧をやったが、戻っていないという。翌日も戻らず、醍醐付近から伏見、来栖野、宇治あたりまで尋ね回ったが行方知れずである。三日ほど経て、ある寺男が薪採りに行くと峰のあたりに白いものが見え、辿ると大木の枝に何かが引っかかっていた。案内させて見に行くと、行方知れずの出家の屍骸である。白い小袖が引っかかり、屍骸はほうぼう食いちぎられていた。高僧は、あの出家には人に知られぬ破戒の罪があり、天狗にこのようにされたのであろうと言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・昭和中期(1977年頃))
ザシキワラシ(座敷童子)と福の神(怪談の世界)/遠野・東北の怪異伝承/家運の盛衰と怪音/妖怪と幽霊譚/山田野理夫の怪談採集