これは今からちょうど、一○○年ぐらい前の話ですな
どんな伝承か
安宅ヨツは孫と寝ていた夜中の一時ごろ、表の戸を叩く音でふと目を覚ました。戸を開けると、いつも一緒に法話を聞きに行く島本が立っていて、州津の寺で偉い坊さんの説教があるから一緒に行こうと誘う。信心家のヨツは着替えて出たが、渦の渡し場の近くまで来て、浄光寺にお参りしてから行くと言い張った。島本は早く舟に乗ろうと手を引いたが、ヨツは浄光寺へ向かう。住職に事情を話すと、州津に説教などなく島本もどこにもいないと言われた。翌朝、本堂の阿弥陀如来の扉が一枚開いていた。のちに狸に憑かれた者が、島本に化けたが東の門で光に威圧されて逃げたと語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。