一九六三年ごろのことという
どんな伝承か
一九六三年ごろのある秋の夜、養魚場を経営する小椋茂が池の見廻りをしていると、親魚池で一匹の猫がすごい勢いで泳ぎ回っていた。泳ぐというより何ものかに引きずり回されるようで、ときどき水に沈む。あわててタモ網で掬い上げると、いつも魚を狙いに来る赤虎の猫で、五、六〇センチもある親魚に爪を立てたまま引きずり込まれ、ぶら下がって泳がされていたのだった。後日談がある。小椋が頼まれて飼っていた鷹が小屋を脱け出し、夜に帰ってきたところをこの赤虎が襲って食ってしまった。腹を立てた小椋が投げた石が当たり、猟をする猫は死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。