明治の頃の話ですが、佃という所のことですわな
どんな伝承か
明治の頃、佃というところでの話である。年老いた両親が、加茂へ嫁にやった娘に子ができたと聞き、孫を見に出かけた。その頃そのあたりは四方が竹藪で、家はなかった。馳走になるうちに日が暮れ、泊まっていけと勧められたが、明日は仕事があるからと断り、提灯を借りて帰った。夜の十時頃、今の佃の駅のあたりにさしかかると、蝋燭の火がぱっと消えた。身が引き締まるようにしんとして、後ろ二、三間から何かがついて来る気配がする。振り向けばその隙に飛びつかれるかもしれず、そのまま庭先まで戻って家へ駆け込んだ。祖母に話すと「それは山犬さんじゃ」ということになり、小豆粥を炊いて裏に出しておくと、朝にはなくなっていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。