小学生のころ、当時の老人から聞かされた話
どんな伝承か
滋賀県愛知郡愛東町で、話者が小学生のころ老人から聞かされた話。廃藩置県が叫ばれた明治の初期、「よいじゃないか」と都会も農村も踊った時分のこと。愛知郡平尾村に木村久右衛門という人物が現れ、一夜のうちに伊勢神宮に参拝して翌朝には天照皇大神宮のお札を持ち帰り、財産家の庭先に配って回った。貧しい者にはなかなか札はもらえない。天狗さんに祭り上げられた久右衛門は、紅屋こと松岡太平宅の奥座敷に菰を敷き、しめ縄を張って白衣で無言のまま坐っていた。札が尽きると村人は天狗さんを村はずれまで見送ったが、小倉村領の八反溜の土堤で二足三足飛んだと思うと姿が消え、にわかに雲が出て山が鳴り、堤には足跡が残ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。