太田堰に現れた赤い顔のめどち
どんな伝承か
青森県十和田市での話である。三十年ほど前の七月の初め、話者が沢田川、すなわち太田堰のふちを歩いていると、きゃっきゃっと声を上げながら堰をさかのぼってくるものがあった。目を凝らすと、体は黒く顔は赤い、十歳ほどの子どもの背丈で、髪をさらりと垂らしている。めどちだと思った途端、向こうもこちらに気づいたらしく、そのまま水に沈んで消えた。また五月の初め、自分の田で苗を取っていると同じ声がする。見れば太田の水車のわきの、土が崩れた穴に子どもが立っており、顔は猿そっくりであった。田の土にはたびたび足跡が残り、水掻きのあるのがはっきり分かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。