二俣の市と酒に溺れる男
どんな伝承か
遠州二俣の宿で、同宿の一人が宿帳を見て不思議なことを見つけた。繭買や材木商、雑貨の注文取など遠方の旅客に混じって、附近の村々の、職業を農と記した人が大分泊まりに来ているのである。山々の口元にこうした町があるので、平穏な山中に住む者が時に浮世を見に出てくる。大抵は月に六度の市が立つ。市と酒とはほとんど断つべからざる関係があり、亭主の方が外出の序が多いうえ、こうした独善主義の商品が市にあって、折々は陶然として歌って還るために用を作って出て行かれるようでは、普通の貞淑では辛抱がしにくい女もあろうと記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。