安倍野の童子を産んだ信田の狐
どんな伝承か
釈迢空の歌にうたわれた安倍の童子とは、摂津の安倍野に生まれた子で、その母は狐だったと語られる。歌舞伎でいう葛の葉である。猟師に射られようとしていた老狐を安倍保名が助けたところ、狐は恩返しに保名のいいなずけの姿を借りて妻となり、子をもうけた。やがて本物の葛の葉姫が現れて正体が知れると、母狐は恋しければ訪ねてこいと信田の森を詠みこんだ歌を残して去ったという。この子がのちの阿倍晴明である。狐は人をたぶらかすだけの獣ではないと、日本人は長く考えてきた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語・昭和(民俗))
関敬吾編『日本人物語5―秘められた世界』。日本の生活文化に潜む秘密・境界・異界・怪異を主題別に集成する。