畜生谷で馬にされかけた石徹白の男
どんな伝承か
加賀白山の谷筋には、足を踏み入れた者が犬や馬に変えられてしまう畜生谷があると語られてきた。南の麓の石徹白から山へ入った男は、まだ日の高い夕刻だというのに、あたりが不意に闇へ包まれるのに遭う。灯りを頼りに一軒の家へ入り、老人にすすめられて湯につかっていると、背を流しにきた十六、七の少年が、自分はかつてこの家に奉公していた小二郎丸だ、ここは畜生谷だから早く逃げよと囁いた。驚いて走り出た男を老人が追い、馬沓を投げつける。それが踵に当たり、見ると馬の毛が生えていた。川を渡ると老人はもう追ってこなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語・昭和(民俗))
関敬吾編『日本人物語5―秘められた世界』。日本の生活文化に潜む秘密・境界・異界・怪異を主題別に集成する。