戸隠山に棲むと伝わる紅葉狩の鬼女
どんな伝承か
長野の市街からバスの通う戸隠山も、山また山を越えた奥にある。そこには目を奪うほど美しい姫が住んでいたが、その正体は鬼女だったという伝えがあり、謡曲の紅葉狩によって広く知られてきた。古い人々は海のかなたに常世の国があると信じ、時代が下ると同じ理想の国を山の奥深くに求めるようになったという。戸隠山もまた、そうした異郷のひとつと考えられていたのだろう。鬼の岩屋や大江山の酒天童子の話も同じ流れにあり、異郷を思う民族の心理が数々の伝説を生んできたと本書は説いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語・昭和(民俗))
関敬吾編『日本人物語5―秘められた世界』。日本の生活文化に潜む秘密・境界・異界・怪異を主題別に集成する。