対馬の茂地
どんな伝承か
対馬は人の入ってはならない聖地がとくに広かったところで、そこを茂地といい、海岸ならば卒土ヶ浜とか不通浜などといった。島の南端の天道山はとくに霊地として尊ばれ、天道法師をまつってあるというが社殿はなく、山全体が祭場である。祭場の入口を清輪とよび、神籬を怕所といった。神籬は石を積み上げたもので、磐境とも標の塔ともいった。一般の人はこの磐境の外を通るときにすら手を洗い口をすすぎ、けがれを去り、榊の葉をくわえて言葉を発せず、駕籠や馬に乗る者は下り、道に落ちたものは拾わなかった。忌中の者は境外といえども茂地の近くを通ることを許されなかった。だからそこには樹木がうっそうと茂り、昼もなお暗かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語・昭和(民俗))
関敬吾編『日本人物語5―秘められた世界』。日本の生活文化に潜む秘密・境界・異界・怪異を主題別に集成する。