大晦日に王子稲荷へ集う数万の狐火
どんな伝承か
関八州の統領と仰がれた王子稲荷では、大晦日の夜に数えきれぬほどの狐火が現れるといわれ、近在から初詣を兼ねた見物人が押し寄せた。ひとつふたつと灯りはじめた火はやがて数万にふくれ、社頭へ近づいては引き返す往来を一晩じゅう繰り返す。あたりは恐ろしくも幻想的な光に包まれ、夜明け前には消え失せた。人々はその火の様子から翌年の豊凶を占ったという。江戸では狐が女に化けるとも信じられ、王子稲荷で男を見初めた老狐が夜鷹に憑いて近づいたという話も残っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
呪術と占いの日本史(渋谷申博・瓜生中・呪術・占い史・現代(解説))
渋谷申博・瓜生中『呪術と占いの日本史―歴史を動かし庶民が信じた知られざる闇の系譜』。古代から近世まで、日本史を動かした呪術・占い・呪詛・怨霊を時代別に解説する。第一章(古代)では屈葬・土偶の人形呪術・鳥信仰、卑弥呼の鬼道、大国主尊伝説、トコヒの呪いと盟神探湯(ウケヒの審判)、妖怪にされた土蜘蛛、景戒の夢占い、人柱伝説、橘奈良麿の僧人形・子狐串刺しの呪詛、童謡の予言、道鏡と宇佐神宮の託宣、怨霊の祟りと遷都を扱う。