幕の裏から消えた弘法大師像
どんな伝承か
滝野川署は六月二十八日、府下滝野川町西ケ原にある真言宗栄学寺の住職萩原明信を引致して取り調べた。萩原は前年の春、檀家を説いて二百円を集め、京都から弘法大師の像を求めて毎朝拝ませていたが、六月六日から幕を下ろして像を隠した。むきだしでは勿体ないという言い分に檀家も納得し、幕の外から手を合わせていた。ところが檀家の一人が巣鴨町上駒込の古物商の店先で、見覚えのある仏像を見つける。問い詰めても要領を得ないので訴え出たところ、萩原が妾の手当てに窮し、百二十円で売り払っていたことが分かった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年))
日本怪談実話(田中貢太郎)/幽霊と怪光の実話/怨霊と祟り・因果/死の前兆と怪音/各地の怪異実話