炭を運んだ少女と火元
どんな伝承か
松浦静山の『甲子夜話』は、天明八年(一七八八)一月三十日の京都大火の折の見聞をのせる。晡時(午後四時頃)に一軒の荒物屋から出火した火は、強風にあおられ、瞬く間に禁裏や二条城までを包む大火となった。山上の寺院からこれを眺めていた僧は、燃え上がる火焔の上を、甲冑を帯し馬に跨った異形の者が群れをなして奔走し、夜明けとともに消え失せるのを見たという。また町の噂では、その日の早朝、十二、三歳ばかりの少女が火桶に真赤な炭をいっぱい入れて火元の荒物屋に入るのを近所の人が目撃したが、家人は気づかず、暮れ方その家から火の手が上がった。これも「妖魔天狗」の類であろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・昭和)
早川純夫『日本の妖怪』。神話時代から江戸まで、日本の妖怪と妖異を歴史の流れに沿って描く。