一夜の契り
どんな伝承か
『古今著聞集』に載る、一層哀れな狐の話。ある夕暮れ、一人の若者が朱雀大路を歩いていると、腰のあたりまである長い髪をゆらしながら歩いて来る、美しい娘に出逢った。引き寄せられるように口説くと、娘は「私と寝ればあなたの命がありません。でも、もしあなたが私のために法華経を書いてねんごろに供養してくださるなら、私があなたの命に代わりましょう」と言った。二人はとある堂に入って一夜の契りを結んだ。明け方、鶏の声が聞こえると娘は立ち上がり、男の扇を乞い受け、「陽が昇ったら、武徳殿のあたりに来て見てください。私が何者かもおわかりになるでしょう」と謎めいた言葉を残して、闇の中に消え去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・昭和)
早川純夫『日本の妖怪』。神話時代から江戸まで、日本の妖怪と妖異を歴史の流れに沿って描く。