在原業平と鬼一口
どんな伝承か
右近中将在原業平は非常な好色家であった。あるとき、思いを寄せる女をひそかに盗み出したが、隠す所がなかったので北山科のあたりの荒れて人も住まぬ古い山荘へ連れて行った。住まいの屋は板敷の板もなく寄りつけなかったので、庭にあった大きなあぜ倉の内に畳を一枚持ち込み、女とともに臥した。にわかに雷電霹靂して恐ろしかったので、中将は太刀を抜いて女を後ろへ押しやり、起き居てひらめかした。やがて雷も止み夜も明けたが、女の声がしないので見ると、女の頭と衣類だけが残っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。