太田の濡れ女と牛鬼
どんな伝承か
島根県大田市に、昔、染五郎という染物職人がいた。ある夜、海辺で釣りをしていると、たくさん釣れて魚籠にあふれるほどになったので帰ろうとした。すると海中から濡れ女が現れて、赤ん坊を抱いてくれという。思わず抱きかかえると、濡れ女は海中に姿を消してしまった。赤ん坊を置いて急いで逃げ帰ろうとすると、今度は海中から牛鬼が現れて追いかけてきた。あわてて近くの小屋に逃げ込むと、牛鬼は小屋の周りをぐるぐる回り、『残念だ、残念だ』と叫んで立ち去った。そのときの牛鬼の声は、女の声であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・岩井宏実による妖怪事典『暮しの中の妖怪たち』。日本各地の妖怪を暮しの空間(山・海・道・家・屋敷)ごとに、約六十項目にわたり具体例とともに解説する。