旅館の幽霊座敷をのぞく若い女
どんな伝承か
東京心象会の村上広治が発表した体験談である。京都木屋町の一流旅館に、そこで寝た者は必ずうなされるという一室があった。ある夏の夜、なじみの村上が泊まりに行くと部屋がふさがっており、女中に勧められた空き部屋に蚊帳を吊って寝た。夜更け、十七、八の娘が蚊帳の上から顔をのぞいて声をかけ、隣の間へ行くと、そこに寝ていた五、六人がひどくうなされた。宿の者に話すと皆が青ざめ、昔から人を寝かせない部屋で、女が変死した部屋だと明かした。のちに再びその部屋に泊まった村上は病に倒れ、床の中で髪を引かれるように感じたという。
原典より
予は女中の悪戯と思ひ默して見て居りしに、其女は次の室に行きたり(葭簾を隔てたれば能く見えたり)然るに其所に臥し居たる五六人が非常に魘されたり。—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年))
『心霊不滅』は、岡田建文が著し、昭和十五年に大阪の国民書院が発行した心霊研究書である。人の心霊は肉体の死後も存続するという立場から、神道の神霊の垂示を引きつつ、心霊の本質と「化精」、遠感と魂の遊離、生霊、二重体、交霊術と霊媒、霊感筆記、幽霊写真などの物理現象、幽霊の出現を論じる。序説と七章からなり、第三・四・五・七章に「例一」「例二」と番号を付けた事例を並べ、今昔物語の説話、江戸から昭和の国内の見聞、欧米の報告を挙げる。