天狗隠し
どんな伝承か
与野の人々は昔から榛名山の榛名神社を厚く信仰し、講を組んで毎年参詣していた。明治四一年、講中が例年どおり山へ登る途中で、仲間の一人が行方知れずになった。皆で山中をくまなく捜しても見つからず、やむなく参拝だけ済ませて与野へ戻ると、その男は放心したように自分の家のあたりをうろついていた。これが天狗隠しで、後に、登山の朝に生卵を食べたことが天狗の忌み嫌うところに触れたのだと分かった。恐れ入った講中は大きな天狗の面を新しく作って奉納し、神威に背かぬよう誓い合った。榛名神社の額殿に掛かる朱色の天狗面がそれだという。
原典より
あとでわかったことですが、かれはお山にのぼる朝、生卵を食べたため、それが天狗さまの忌諱に触れたのです。—— 与野市史 民俗編――伝説・昔話(与野市(編)・与野市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
与野市史 民俗編――伝説・昔話(与野市(編)・与野市史)
『与野市史 民俗編――伝説・昔話』は、与野市史の民俗編から「一〇 伝説・昔話」の章だけを収めたものである。武蔵国足立郡与野にまつわる伝説と昔話二十話を、疫神や弘法大師、源頼義の伝えから、お化け地蔵・一つ目大入道・天狗隠し・猫橋のいわれなどの怪異譚まで、おおむね時代順に並べる。十五話は岡安茂生編『与野の伝説』に、ほかは『埼玉県伝説集成』『大宮市史』に拠り、再調査して題名や内容を書き改め、多くの話の末に注を付す。