長伝寺の水飲み竜
どんな伝承か
与野上町の長伝寺の本堂の欄間には、竜と虎の見事な彫り物がある。ある晩、住職が本堂へ行くと欄間の竜が消えており、檀家総出で夜中まで捜しても見つからないのに、翌朝には元の場所に戻っていた。同じことが幾晩も続いたため当番を決めて見張ったが、その間は何も起こらず、十日目に見張りをやめた晩にまた竜がいなくなった。住職がひとり本尊の陰に隠れて見張ると、夜十時ごろ竜が音もなく欄間を抜け出し、十四、五メートルもの巨体となって寺を出て、近くの小川に首を突っ込み水を飲み干した。長雨で周りの稲が水に浸かる中、与野の田だけが水害を免れていたのはこの竜のおかげかと、住職は感謝したという。
原典より
そして、小川のほとりにたどりつくと、大きな首をザブブと川の中へ突っ込んだかと思う間もなく、ゴクンゴクンと音を立てて水を飲みはじめたのです。—— 与野市史 民俗編――伝説・昔話(与野市(編)・与野市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
与野市史 民俗編――伝説・昔話(与野市(編)・与野市史)
『与野市史 民俗編――伝説・昔話』は、与野市史の民俗編から「一〇 伝説・昔話」の章だけを収めたものである。武蔵国足立郡与野にまつわる伝説と昔話二十話を、疫神や弘法大師、源頼義の伝えから、お化け地蔵・一つ目大入道・天狗隠し・猫橋のいわれなどの怪異譚まで、おおむね時代順に並べる。十五話は岡安茂生編『与野の伝説』に、ほかは『埼玉県伝説集成』『大宮市史』に拠り、再調査して題名や内容を書き改め、多くの話の末に注を付す。