向島の船宿で開かれた百物語
どんな伝承か
森鷗外の『百物語』は、向島の川開きの日に催された江戸名残りの百物語を見物に行く話である。今紀文と呼ばれた飾磨屋という商人が興行主で、しとみ君と語り手の〈僕〉は柳橋から舟に乗り、木母寺のあたりを経て寺島へ渡り、会場の船宿に着く。〈僕〉の関心は怪談そのものより、こうした催しに人を呼ぶ男がどんな人物かにあった。予想に反して催主は沈鬱で、過ぎ去った栄華を傍観者のように眺めている。鷗外自身も終始傍観者であり、履き違えられた古下駄をつっかけて、その怪物屋敷をぶらりと出ていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路・幽霊・文学史・昭和)