門口の石に腰掛けた老女
どんな伝承か
『遠野物語』第二十三話は、同じ人の二七日の逮夜のことを伝える。知音の者が集まり、夜更けるまで念仏を唱えて立ち帰ろうとするとき、門口の石に腰掛けてあちらを向いている老女がいた。その後ろ姿は、まさしく亡くなった人の通りであった。これは数多くの人が見たので誰も疑わなかった。いかなる執着があったのか、ついに知る人はなかったという。著者は、この老女の向いている〈あちら〉こそ、幽霊の歩く道筋の見えるところなのではあるまいかと述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。