巫女婆さんの生き霊と孤児の父
どんな伝承か
バスの終点近くのよろず屋(配給所)の店先には、巫女婆さんが予言した通り「タコ、イワシ」の黒板があった。店主に尋ねると、タコが届いたのはついさっきで、この辺りには滅多に上がらない品だという。巫女婆さんは子供のない身で以前もらい子をして育てており、その息子の実父を探すため生き霊を呼び出したことがあった。実父は大学生の頃に下宿の女中に手をつけ子を里子に出しており、今は大阪で自転車屋を営んでいた。名簿から突き止めて言伝てを送ると、本人からその話は以前夢に出てきた白衣の婆さんに言われたことがあると驚きの返事が届いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・昭和(戦後))
西丸震哉『山とお化けと自然界』を篇単位で収録。完全装備で岩小屋前を通過する遭難者の幽霊目撃、木曾御岳の人魂たち、カラステングがタコを食う、亡き兄との交信やテレパシー(死者との通信)、幽霊の仮説・怪談といった山岳怪異譚を軸に、呪い殺しの実験・雨やみの術・日蝕と雨やみの術などの呪術、山の昆虫・メスネコの生涯・ヤマネとムササビ・ミミズク等の自然観察、酒・山旅・会津の秘境/栗駒山密林などの紀行随想を収める。