冬の甲斐駒ヶ岳
どんな伝承か
戦争が終わって三年目ごろの冬、著者は人から借りた小型の高度計を携えて一人で甲斐駒ヶ岳へ向かい、風雪の夜を五丈小屋の板敷で過ごした。翌朝は一晩で積もった新雪の急坂のラッセルに六時間を費やし、食料を持たなかったため力尽きて座り込んだ。追いついた高校生二人からビスケットをもらう代わりに、彼らを頂上まで案内した。小屋へ戻ると小屋主のガイドのアラワシが来ていて、著者は以前に頂上の南の谷底で見た白骨の話を持ち出した。
原典より
五丈小屋のガランとした中のいろりばたで、火も起こさずにゴロリとしている。—— 山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊と雑誌の一篇「ワシは安禄山」を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。「自然界はもちつもたれつ」「酒」「山」「兄との交信」の四部に、チョウや小動物、山や湿原の探検、酒と温泉の話とともに、横尾谷の岩小屋の幽霊、釜石の幽霊、木曾御岳の人魂、呪い殺しの実験、雨やみの術など著者自身の怪異体験をつづる。あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。