前世はアイヌの酋長と安禄山
どんな伝承か
新聞社の婦人部長の誘いで、著者は銀座裏の料亭で前世を見るという老婆に会った。老婆は著者の前世をアイヌの酋長の一人息子、さらにその前を唐の玄宗の重臣で謀反を企てて殺された人物と告げ、同席の友人が安禄山だと言った。悪党の生まれ変わりかと著者が落胆すると、老婆は世のために働いた人だと言い切った。後日、原稿の締め切りが迫った夜、書斎の隅に著者とよく似た顔の男が立ち、安禄山と名乗った。男に促されて体に重なると唐の世に入り込み、楊貴妃と言葉を交わして乱の真意を知ったという。
原典より
黒いドバーッとした服を着て、頭には烏帽子ともつかないものをかぶっていて、よくよく見ると、顔は私の顔にかなり似ているじゃないか 。—— 山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊と雑誌の一篇「ワシは安禄山」を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。「自然界はもちつもたれつ」「酒」「山」「兄との交信」の四部に、チョウや小動物、山や湿原の探検、酒と温泉の話とともに、横尾谷の岩小屋の幽霊、釜石の幽霊、木曾御岳の人魂、呪い殺しの実験、雨やみの術など著者自身の怪異体験をつづる。あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。