カラステングがタコを食う
どんな伝承か
初冬の甲斐駒ヶ岳(2966メートル)の五丈小屋は風雪で唸っていた。西丸震哉は一人、頂上をめざして七時間半かけて登り、石の祠のある頂上に達したが、寒さに耐えかね早々に引き上げた。小屋へ戻ると、後ろでモシャモシャと呪文を唱える老婆の声がする。恐る恐る回ってみると、白衣の行者が夕陽のあるはずの方角を向いて数珠をこすっていた。駒ヶ岳神社の巫女だと分かり安心する。翌日は一歩も外へ出られない嵐で、小屋の中で巫女と二人、眠りをむさぼって過ごしたという。
原典より
* **呪い殺しの実験*** **雨やみの術*** **六○○○キロひとまたぎ*** **日蝕と雲と雨やみの術**### **巻末*** **文庫版あとがき**### I 自然界はもちつもたれつ—— 山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・昭和(戦後)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・昭和(戦後))
西丸震哉『山とお化けと自然界』を篇単位で収録。完全装備で岩小屋前を通過する遭難者の幽霊目撃、木曾御岳の人魂たち、カラステングがタコを食う、亡き兄との交信やテレパシー(死者との通信)、幽霊の仮説・怪談といった山岳怪異譚を軸に、呪い殺しの実験・雨やみの術・日蝕と雨やみの術などの呪術、山の昆虫・メスネコの生涯・ヤマネとムササビ・ミミズク等の自然観察、酒・山旅・会津の秘境/栗駒山密林などの紀行随想を収める。