甲斐駒直下の白骨と失踪青年
どんな伝承か
西丸震哉は以前、甲斐駒ヶ岳の頂上から南方の谷底で白骨死体を見たことがあった。かなり古いもので、骨の間から草が生え、木に引っかかった骨もあった。土地のガイド・アラワシに尋ねると、彼も同じ白骨を見ていた。昭和二年ごろ、頂上直下の九合目あたりの尾根に焚き火の跡を残しただけで行方不明になった若者があり、地元で何度も捜索したが分からず、その父親はあきらめきれず一人で山に入り続けたという。西丸はその白骨を失踪した息子のものと考えたが、アラワシは「そっとしておいたほうがよい」と語り、二人はそのままにしておくことにした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・昭和(戦後))
西丸震哉『山とお化けと自然界』を篇単位で収録。完全装備で岩小屋前を通過する遭難者の幽霊目撃、木曾御岳の人魂たち、カラステングがタコを食う、亡き兄との交信やテレパシー(死者との通信)、幽霊の仮説・怪談といった山岳怪異譚を軸に、呪い殺しの実験・雨やみの術・日蝕と雨やみの術などの呪術、山の昆虫・メスネコの生涯・ヤマネとムササビ・ミミズク等の自然観察、酒・山旅・会津の秘境/栗駒山密林などの紀行随想を収める。