トップ山梨県の伝承富士川町

囁きが燃やした山小屋のズボン

所在地山梨県南巨摩郡富士川町(櫛形山)
年代昭和(戦後)
登場西丸震哉
出典山とお化けと自然界

どんな伝承か

甲府盆地の西にそびえる櫛形山は、奥千重岳という別名も持つ。その裏手の山上にはかつて牧場だった土地があり、林のふちに人の住まない小屋が一つ残っている。著者はその囲炉裏端で、教え子の女性と、その恋人になった山仲間と三人で夜を過ごしていた。男が横になって眠り込んだので、寝ている耳に何かささやいたらどんな夢を見るかと思いつき、女性が息のような小声で火事だと吹き込んでみた。すると男は目玉をかっと開いて起き上がり、両手で自分のズボンを激しく叩きはじめ、焚火がはねて火がついたと言い張った。焦げ跡ひとつない。山では火の粉の音を絶えず気にしているから、その心配とささやきが結びついて飛び火の光景を作り上げたのだろうという。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・昭和(戦後))

西丸震哉『山とお化けと自然界』を篇単位で収録。完全装備で岩小屋前を通過する遭難者の幽霊目撃、木曾御岳の人魂たち、カラステングがタコを食う、亡き兄との交信やテレパシー(死者との通信)、幽霊の仮説・怪談といった山岳怪異譚を軸に、呪い殺しの実験・雨やみの術・日蝕と雨やみの術などの呪術、山の昆虫・メスネコの生涯・ヤマネとムササビ・ミミズク等の自然観察、酒・山旅・会津の秘境/栗駒山密林などの紀行随想を収める。

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