上野の戦を怖れて脱走した西本は
どんな伝承か
甲府で母・藤江を殺されて逃げていた西本義直を追い、その子・山名道太郎が仇討ちに及んだ。だが道太郎に討たれたのは実は義直の弟・義次で、義直自身は難を逃れて上州へ落ちのび、脱走兵らと諸国を漂浪した後、明治になって東京へ出て弟の名を名乗り隠居し、明治二十二三年頃まで生き延びたという顛末が、後年ある戯作者の話として明かされている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集・大正~昭和初期(推定))
本書『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎による幕末から昭和初期にかけての日本各地の怪談・奇談を集成した作品である。明治維新期の松木事件から関東の連続殺人鬼事件まで、実地取材に基づく歴史的事件の記録と、民間に伝わる幽霊譚・怪異現象が混在している。特徴は、単なる怪談の創作ではなく、実在の地名・人物・事件を背景に、社会的矛盾や人間の怨恨が生み出す超自然現象を描く点にある。