甲府東部第六十三部隊
どんな伝承か
昭和十七年頃、甲府東部第六十三部隊に初年兵二十人が入隊し、内務班の古年次兵からいびられ、猛烈な教練にくたくたになった。全員学校出の初年兵に対し、幹部候補生になれば階級が上になる者へは古年次兵がことさら辛く当たった。訓練中に大学出の兵が立木に抱きついて泣き出す者もいた。お坊ちゃん育ちの同年兵は軍隊の要領になじめず、たちまち悪戯の対象にされ、寝小便がひどくなった。ある朝、非常呼集で水筒に小便が入っていたことが露見し、以後は不寝番が一定時刻に彼を起こして便所へ通わせる決まりになった。それでも間に合わず、彼はついに病人扱いされ、呆けたまま野戦へ送られたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。